カカオニブの品種
カカオの品種について
カカオニブの起源となるカカオ豆はその他植物と同じように多数の品種が存在しており、風味・香りは品種ごとに特徴があります。
世界で流通されているカカオは大別すると【クリオロ種】【フォラステロ種】【トリニタリオ種】の3種類になります。
本項ではこの3種類のカカオの特徴について解説していきます。
【クリオロ種】Criollo
コロンブス以前の中央アメリカが原産地と言われています。ヨーロッパで最初に知られた品種で、最初の入植者によって導入されました。現在、メキシコ、グアテマラ、ニカラグアで少量栽培されているほか、ベネズエラ、コロンビア、ペルー、カリブ海の島々、トリニダード、ジャマイカ、グレナダ島などでも栽培されています。大陸以外では、マダガスカル、ジャワ、コモロ諸島での栽培が報告されています。
他の品種に比べて、木が弱く、成長が遅く、収量が少なく、病気や害虫にも弱い品種です。しかし、その果実は甘く、苦味が少なく高品質なチョコレートを作ることができるという特徴があります。その繊細で滑らかな複雑な風味と強烈なアロマは、世界で最も要求の厳しい市場でニーズが高い『高級カカオ』です。
クリオロ種は「カカオの王様」と呼ばれている希少な品種で、味と香りが良く高品質な豆として評価されています。この品種のカカオは通常、高級チョコレート用に使われます。
栽培が非常に難しく、病害虫の被害を受けやすいため、世界の生産量の5~8%に過ぎません。
風味はマイルドな苦味と酸味、そしてフルーティーなフレーバーで香り高い繊細さがあります。柑橘類、ベリー類などの酸味のあるフルーツフレーバーが感じられます。
クリオロ種のカカオの中でも最も重要な品種は、世界最高のカカオの一つとされるクリオロ・ポルチェラーナ(マラカイボ・ズリア)、熟す前に赤と緑の果実ができるクリオロ・アンディーノ、そして5つの縁が目立つ果実ができるクリオロ・ペンタゴナです。
1950年代までは、メキシコ、グアテマラ、ニカラグア、ベネズエラのクリオロ種のカカオが非常に重要でした。しかし、他の場所への適応性が限られていることや、様々な病気にかかりやすいことから、栽培や増殖への関心が薄れ、純粋な状態では消滅してしまいましたが、ベネズエラ、メキシコ、ニカラグアの一部に小さな区画が残っています。
【フォラステロ種】Forastero
アマゾン上流が原産地で、アフリカやアジア諸国で最も多く生産されています。耐性があり、香りがあまり強くないため、主にチョコレートに混ぜてボディ感を出すために使われます。20世紀初頭にチョコレートの需要が大幅に増加したため、ヨーロッパ人が植民地に持ち込みました。
ブラジル、ペルー、ボリビア、コロンビアが原産の『普通のカカオ』と言われています。ペルー、エクアドル、コロンビア、ブラジル・ギアナ、ベネズエラ、西アフリカ(コートジボワール、ガーナ、カメルーン、サントメなど)に広がり、その後、東南アジアにも広がっています。後者の2つの地域は、現在、世界の生産量の80〜85%を占めています。
風味は強くて苦く、やや酸味があり、タンニンと渋みが多い種で、香りの力強さはありますが味の多様性はありません。しかし、収穫量が多く、早刈りで、樹勢が強く、病気にも強いという特徴があります。
なお「メインストリーム」のチョコレートに使われているカカオは、この品種から作られていますが、一般的には苦味が強く、香りの繊細さに欠けるものとなっています。現在、コートジボワールは、主に欧米に輸出されるフォラステロ種のカカオの生産で世界をリードしています。
最近では、大手企業が特別なコレクションを市場に投入し始めており、特にダークチョコレート(カカオ分50%以上)やカカオ分の割合が高いものを発売しています。これは、消費者や試食者にとっても良いことです。というのも、チョコレートの悪い評判(太りすぎ、粒々など)は、カカオ分に相当しない追加の割合が原因であることが多いからです。例えば、ミルクチョコレートは、外国産のココアを20~25%含み、残りは粉乳、ココアバター、白砂糖、乳化剤(通常はレシチン)から作られています。実際には、これらの添加物が製品の品質を制限してしまうことがあります。
【トリニタリオ種】Trinitario
カリブ海南部に浮かぶトリニダード島原産のクリオロとフォラステロの交配種で、野生では発見されていません。ラテンアメリカやカリブ海で広まり、1850年頃にはアフリカにも導入されました。
フォラステロよりも香りが強く、クリオロよりも抵抗感があります。世界の生産量の10~15%を占めています。
雑種では、グアヤキル、セイロン、パタスチロ、ラガルト、ブランコ・マルフィル、ウランガ、ポルセラナ、マティーナ、パジャリート、サンチェスなど、平均50種類が分類されています。重要な品種として、CCN-51ココアがあります。これは、1965年にエクアドルのグアヤス州ナランハルで、農学者のホメロ・カストロ・ズリタが入手した在来種のココアです。CCNという名前はカストロ・ナランジャル・コレクションを意味し、51という数字は目的の品種を得るために行われた交配の数を表しています。このカカオは、1ヘクタールあたりの生産性が高いため、農家の間でとても人気があります。結実のために交配を必要としない自己適合性、2歳で生産を開始する早期栽培、病害虫への耐性、異なる熱帯地域への容易な適応、そして脂肪の割合が高く(54%)、産業界で高く評価されています。しかしその一方で、酸味や渋みがあるため、ファインフレーバーココア(CFdA)の特徴を備えていないとも言われています。
出典:Estudio del CACAO en el Perú y en el Mundo “Alimento de los dioses”(Carlos Lineeo)Lima, julio de 2016
まとめ
カカオ豆はそれぞれ品種によって特徴がありますが、カカオ豆から出来るカカオニブは品種の差だけではなく、栽培地・加工方法によっても風味と香りは大きく違います。カカオニブを食べたことがある方で、良く聞かれる感想が『苦い』『硬い』『不味い』というお声が多いですが、そういった方は『普通のカカオ』フォラステロ種から出来たローストされすぎたカカオニブかもしれません。
カカオニブにネガティブなイメージを持たれる方には、『高級カカオ・ファインカカオ・カカオの王様』といわれる位、希少なクリオロ種のRawカカオニブを試して頂きたいです。
カカオニブの概念が変わると思います(^^♪